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今日もいい天気、61、問答

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と、不意にテレビモニターに電源が入り、妙なファンファーレが鳴り響く。
突然の大音量に、鼻沢さんも驚いて思わずテレビモニターに目をやる。
すると…
画面いっぱいに、老いた男の顔が映し出される。
上は禿げて両サイドに白髪、ぽってりした福々しい頬、牛乳版の底のようなメガネ。
そして、猫が数匹くっついている。
肩にのぼったり、胸を這い上がろうとしたり、頭の上で眠ったりしている。
猫に爪を立てられたのか、顔面や首筋に引っ掻き傷がちらほら見える。
奇妙な猫男…
「青山康晴です」
と、猫男は傍若無人にまとわりつく猫に構わず、モニターから話しかける。
「青い空の会の代表をしています。」
青い空の会?
なんだそりゃ?
「あなたは、お名前は?差し支えなければ」
とモニターから話しかけられる。
こっちの声も向こうに聞こえているのかしら?
「あ、鼻沢鼻子です」
「鼻沢さんね。」
やはり、向こうにもこちらの声が聞こえるようになっているようだ。
しばしの沈黙の後、唐突に
「君は今の民主主義について、どう思うかね?」
と、甲高い声で尋ねる。
「え?民主主義ですか?」
と、鼻沢さんは聞き返す。この状況で出てくる質問としてはいささか突飛すぎるから。
「そう。民主主義について。1人1票。みんな同じ。平等でいいじゃないか、と思うかね?」
「え…まあ、そう思いますよ…だって、それが民主主義なんでしょう?」
「いやいや、それでは論理循環だ。もっと本質的なところを考えて見たことはないかな?たとえば、ある土地の区画整理をしようという時。もう80歳の人は『このまま静かにして欲しい』といって区画整理に反対。まだ30歳の人は『区画整理したら便利だし土地の価値も上がる』と賛成。結果、半数の老人が反対してうまくいかない。さて、これは平等かね?」
さらに突飛な質問だ…
鼻沢さんとしては、この質問に答えるより、どうして今、私にこんな質問をするのか尋ねたいが、猫男には、まずは彼が発した質問に答えなくてはと思わせる、会話のペースに巻き込む力があった。








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四谷ルノワールか、高田馬場カフェミヤマのことが多いです。

開催日時
月1回開催。毎月第3か第4日曜日が多いです。

どうぞお問い合わせください
hisayan45-a2@yahoo.co.jp

芥川賞の歴代受賞作を読んで、お互いの感想を述べあいながら理解や感想を共有する会です。  (たまにはノーベル賞ピューリッツァー賞ブッカー賞ゴングール賞もやりたい)

当会は平成26年4月から始まりましたが、当会の前身となる「灯下会」はさらに数十年の歴史があるとのことです…

このページでは、これからの会の予定とこれまでのまとめを載せていきます。  毎月第3か第4日曜日の午後3時から。(最近は第4日曜が多い。)  場所は都内某所(たぶん四谷あたりの喫茶店)。  会費は特にありません(自分の喫茶店の代金と、2次会に行った場合は割り勘で。)

芥川賞は、書かれた時代の社会を映し出している側面が強いので、  その時代の雰囲気・空気みたいなものまで感じることができれば良いなと思っております。

参加者のほとんどは、文学を専門にしたことがない人ばかりです。  和気あいあいと、自由に議論していますよ!  よろしければご参加ください。

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