鼻沢さんは、反射的にスッと身体を建物の中に滑り込ませる。
磯田君は、 ここは怪しい、と言っていた。そして、ほかには手がかりがない、とも。
もし、ここご本当に怪しいところで隠すことがあるのだったら、真正面から訪問しても、門前払いされてしまうだろう。そうしたら、手がかりの糸は途切れてしまう。
とっさにそう考えて、こっそり侵入したのだった。
それにもし誰かに見つかっても、「すみません、つい迷っちゃって」などと適当に言い繕って逃げられる。愛嬌だけには自信があるんだから。
鼻沢さんはそう考えた。
そして…
建物の中に入って驚いた。
中は、リノリウムの床の長い廊下に、白いドアがいくつか並んでいる。窓はない。冷たい素っ気ない感じ。外観から受ける印象とは正反対。
鼻沢さんも「ここは怪しい、何かを隠している」と直感した。
忍び足で廊下を歩く。すりガラスで中を覗くことはできないが、灯りが漏れてきている。
中で誰かが何かをしているのだ。
そっとドアに耳を押し当てる。
テレビの音が聞こえてくるが、何を言っているのかは分からない。
鼻沢さんは、ちょっと考えてから、そっとドアノブを回してドアを押してみる。ゆっくりと扉が開く。
今日もいい天気、53、追跡続き
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執筆者:hisatez
