「1974年以降に生まれた我が国の人口はいかほどかね?」
官房長官が役人に尋ねると、
「はい、3600から3700万人ほどです。」
と、医療政策課長が答える。
吉山厚生労働大臣が、
「つまり、2600万本ほど、ワクチンが足りないわけだ」
などと分かりきったことを言う。
「そういうことになりますね」
と医療政策課長がうなずく。
総理が
「足りない分は…どういう補充の手立てがあるだろう?」
と誰などもなく問いかける。
結核感染課長が、
「ソマリアの事例では、あ、最後の天然痘のパンデミックですが、この時は先進国各国からの支援で、数百万本のワクチンが集まりました。ですから、今回も海外諸国に援助を要請してみてはいかがでしょう?」
と提案する。
茶谷医師が
「アメリカは、911テロの後、テロの標的になるリスクが高まったとして、全国民に天然痘ワクチンが行き届くだけの数を常に備蓄していると聞きましたがね」
と呟く。
またこれだ!
困ったらアメリカ。自立した安全保障策を講じないで、安直に他国に頼れば良い、などという議論が幅を利かせる。
ため息をつきたくなるような気分で
「では、私としては早急に米国にワクチン供給の援助を申し出るべきだ、ということかな?」
総理は仕方ない、と言うふうに頷く。
「それから、WHOにも天然痘発生を通知する必要がありますね。」
と、結核感染課長が告げる。
「それは義務かね?いつまでに?」
「本来は、流行の恐れがある場合、加盟国には報告の義務があります。流行の兆候を把握してから24時間以内です」
「流行…感染は広がるのかね?」
「複数名が時間差で症状を呈していますから、感染はさらに広がる、と考えるべきでしょうな」
と茶谷医師が断じる。
かなり厄介なことになりそうだ、と総理は苦い顔になる。
「それから、ウイルスの出どころなんだが…我が国は他国からの攻撃を受けた、ということかね?どの国から?」
という総理の問いに、官房長官は、
「ええ…それが未だに判然としていないんです。」
と言葉を濁す。
「公安警察は?何か掴んでいないのか?」
「いや、今のところはどうも…」
と官房長官は総理に目配せする。
そうか、茶谷とかいう部外者の医者がいるから、いまはあまり話せないということか。
茶谷医師は、
「どうぞ私におかまいなく。忌憚なくお話しください。私も、いろいろ知っていた方がご助言を差し上げやすいですしね。」
と澄ました顔で促す。
今日もいい天気、49、カスケード続き
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執筆者:hisatez
