「生きている人間と話すのは、なぜこんなに困難で、思いがけない方向にしか発展しないで、しかも徒労な感じがつきまとうのだろう」(by オーケン)

「死者の奢り・飼育」大江健三郎(新潮文庫)


「死者の奢り」
たくさんの死体が浮いている水槽をかき回している人間が、逆にかき回されきりきり舞いさせられているという皮肉。
生者たちの愚かなふるまいを、死体が高みの見物しているかのようである。
差別して敵意をむき出しに戦っても、徒労な結果しか出ないというのは、実は世の中にはよくあることかもしれない(たとえば戦争も)。


「飼育」
まだ小さな子供が、敵国の兵士と戦わざるを得ない状況になったために左手を失う、
というのは、隔離された田舎の、本来戦うことを要求されない子供にまで戦争は影を落とす、ということなのであろう。
この事件があるまでは、隔離された部落がさながら子供の楽園のようにも思われるが、
撃墜された飛行機から黒人兵が舞い降り、義肢の書記が町からの命令を携えてくることで、
この微妙な均衡を崩してしまう、という図式が緊張感を与えている。
被差別部落や体が欠損している者という差別されている者が、山犬のように黒人を捕まえて飼うという、
差別の複層的構造も考えさせられる。
それにしても、敵同士、恐れていた相手同士がいったんは打ち解けあったのに、
再び恐れ戦わざるを得なくなったのは、国家が戦争という枠組みを作ってしまったためであるのは、強烈な風刺である。



今回も参加者の皆さんのおかげで活発で有意義な議論ができました。

参加者Uさんから次のようなコメントをいただきました。

「読書会は数あれど芥川賞だけを取り上げる読書会というものは非常に少なく
しかも今回の題材が大好きな大江健三郎ということでドキドキしながら初参加させて頂きました。
テキストは大江さんの名著であり芥川賞を受賞した「死者の奢り・飼育」。
とにかくこの小説だけを徹底的に話し合うという非常にマニアック?な集まりだったのですが
皆さん非常によく読み込まれていまして感心するやら納得するやらでとても楽しい時間を過ごすことが出来ました。
結論としましてはやっぱり大江さんは唯一無二の素晴らしい作家さんであるということです!
私は改めてそう感じることが出来てとても嬉しかったです。


こちらの読書会、純文学が好きだという方がいたらぜひとも参加をオススメします。
主催者さんはすっごく優しくて楽しい方です☆


私もまた参加したいと思っています。
ありがとうございました」


Uさん、こちらこそいろいろな示唆をいただきありがとうございました!


Uさんには、大江健三郎の作品では、「弟」は守られるべき純粋なものとして描かれることが多い、など、オーケン専門家ならではの視点を与えていただきました。


また大笑いしながら、充実した読書会になれば良いなと願いつつ、皆様のお越しをお待ちしております(^^)/



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