「あなたは何かを見よう見ようってしているのよ。まるで記録しておいて後でその研究する学者みたいにさあ」
「限りなく透明に近いブルー」村上龍(講談社文庫)
ストーリーは分かり易いが、グロテスクな表現が多くて読むのが辛くなってくる。
暴力、乱交、ドラッグ、腐った食べ物や虫を口にするとか。
しかし、その辛さはリュウが感じている辛さそのものである。
数年前に知り合った若い女が服にストーブの火が燃え移って悲惨な死に方をしたと聞いても
「ピアノ大丈夫だった?」(p98)と聞いたり、彼女のペットだったウサギを飼いたいと考えたりする。
リュウの中では、若い女の命と、彼女のピアノやウサギは同列に捉えられている。
きっとリュウは仲間たちと一緒に居ても、気持ちは遠く離れた場所にあったのだろう。
彼らの会話も、自分たちの関心のあることだけを話して噛み合っていないことが多い。
20歳前後くらいと思われる主人公リュウは、自分の理想郷として流れる車の景色を覚えて再構成したり(p73,74)、
海底都市を夢想したりしていたが、それらは「黒い鳥」が「俺の都市を破壊した」(p152)と言う。
黒い鳥は、しかしリュウの内部に秘められている。ゴキブリや蛾を叩き潰す自分は、
実はそれらを耽々と狙っている鳥に他ならない。
リュウは蛾を口にしてしまうし、巻末の解説で綿矢さんが指摘しているとおり、
「俺は鳥を殺すよ」と言って自分の腕にガラスの破片を突き立てるから、
彼自身が「黒い鳥」であると感じているようだ。
しかし、夜が明けて透明に近いブルーがあたりを支配すると、彼は大地に横たわり癒される。
口に含んだ虫も生きたまま吐き出す。
朝になれば、灰色の鳥は舞い降りてくるだろうか?腐ったパイナップルを啄むために。
ところで、参加者O山氏の疑問。
グリーンアイズって何でしょう?
作中では、ドラッグの別名にようだったり、人の名前であったりするようなのですが、結局わからずじまい。
どなたか、「カンブリア宮殿」に投書して訊いてくれませんか?
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