「むらさきのスカートの女」のあらすじ
月刊誌「文藝春秋」誌2019年10月号 P340から414



P340
むらさきのスカートの女(むらさき)の紹介。語り手(黄色いカーデガンの女、「黄色」)は誰かに似ているとしきりに感じる。
公園にむらさき専用のベンチがあり、いつもそこに座ってクリームパンを食べている。
黄色は、むらさきは自分の姉に似ていると思った。
P342
むらさきのスカートの女は近所では有名人でみんな知らんふりをしたり、さっと道をあけたり、良いことあるかもと思ったり、嘆いたり、いろんな反応をしている。
むらさきのスカートの女は人ごみをスイスイ抜けるのが得意。黄色がわざとぶつかろうとしたらうまく避けられて黄色は肉屋のショーケースにぶつかって壊してしまい、多額の修理代を請求されたという。小学校のバザーで小銭稼ぎをして返したと。
むらさきのスカートの女は元フィギュアスケート選手で今はタレントをしている人に似ている。子供たちの間では、じゃんけんをして選ばれた子がむらさきのスカートの女にタッチしに行くという遊びが流行っているという。
P344
むらさきのスカートの女は、やっぱり黄色の小学校時代の友達のめいちゃんに似ている。まぶただけなら中学時代の同級生の不良の有島さんに似ている。ワイドショーのコメンテーターにも似ている。いや、前に住んでいた町のスーパーのレジ係に似ている。
→計6人に似ている、と。しつこいまでの反復。結局、誰にも似ていない、とも言える。
P346
似ている人を列挙して、「何が言いたいのかというと」「むらさきのスカートの女と友達になりたいと思っている」と。
→「何が言いたいのかというと」は、論理的につながらない。黄色の思考の異常性が垣間見える。
黄色はむらさきの働いた日をメモしている。パート歴も。いまは働いていない。住所も知っている。
黄色は、ちゃんと自己紹介して友達になりたい、だから同じ職場に勤めているとよいのだが、などと考える。
黄色が公園のベンチで待ち構えていると、むらさきのスカートの女の席にサラリーマンが座ってしまう。黄色が説得してどいてもらう。どいてもらうことについて、黄色は「専用は専用、決まりは決まりなのだから従ってもらうしかない」などと述べる。
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黄色は、自分が蛍光ペンで目印を入れた求人誌を店に置いておき、むらさきのスカートの女の手に取らせていた。そのページを開くように、むらさきのスカートの女を見つめて一心に念じている。
むらさきは、このあと、面接に行って落ちてしまい、さらに肉まん工場、夜勤の棚卸の面接に行く。
P350
無職の期間が2か月になったので、黄色はむらさきのスカートの女が経済的に困っていないか気に掛ける。家賃は光熱費は支払えているのだろうか?その独白のなかで、黄色は家賃の支払いをやめてしまった、という。肉屋のショーケースの修理代を支払ったために、家賃が滞ってしまったという。支払いの追及から逃れるために、ホテルや漫画喫茶などの『緊急避難先』を10軒ほど見つけているなどと言う。
→このあたりで、黄色はおかしいと気付いたという参加者が多かった。司会は、まだまだ先まで、黄色がおかしいと思わなかった。ちょっとだらしない人、くらいかなと。
むらさきのスカートの女は、求人誌を見ながらいくつもの会社の面接を受けていく。それに対して、黄色は「すべての面接について行ったわけではないが」「見当外れのところばかり」などとそれを評価している。
→すべての面接についていくつもりであり、黄色は勝手にむらさきのスカートの女に適した会社がどういう会社か見極めているつもりである(それはもちろん黄色が現在勤める会社)。黄色は少しおかしい、と読者が気付くヒントになっている。
ずいぶん面接に落ち続けてから、黄色の勤める会社に面接に行くことが決まる。
黄色は、むらさきのスカートの女の面接に備えて、シャンプー工場でアルバイトしていた時にもらってきた試供品を渡したいので、サンプル配りを装って自分の試供品のシャンプーを手渡すことを思い立つ。
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いよいよむらさきのスカートの女にシャンプーの試供品を手渡そうとした時に、商店街の会長に咎められてしまい、思いを果たせない。そこでむらさきのスカートの女の自宅のドアノブに引っ掛けておくことにした。
むらさきのスカートの女は無事に受かり、黄色の職場に来ることになった。
→それを「長い道のりだった。ようやくスタートラインに立ったと言える」などと述べ、あくまで黄色はむらさきのスカートの女と友達になることが目標であることがほのめかされる。
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むらさきのスカートの女の初出勤の日。従業員たちの朝礼。ストッキングが伝線して履いていない、制服のエプロンの着け方がヘン、などとむらさきのスカートの女のおかしな点をあげつらう。
朝礼の最後に自己紹介。声が小さくて、先輩従業員に「きこえませーん」などとさっそくのいびり。所長が「日野まゆ子さんでーす」と代わりに言ってフォローする。
→日野まゆ子、と名前が明示されてからも、黄色はむらさきのスカートの女と呼び続ける。
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所長がむらさきのスカートの女に発声練習の特訓をやってあげて、おかげで声がよく出るようになる。むらさきのスカートの女は所長に感謝する。声がはっきり出せるようになって、むらさきのスカートの女の職場での評判も良くなっていく。
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「おとなしそう」「教えたことをきっちりやってくれてる。真面目だしね。鈍臭そうに見えて、意外と動きも早いのよ」というチーフの評価。中高6年間は陸上部だったと。
→むらさきのスカートの女は、変なヤツではなく、実は仕事ができる普通の女性であるらしいことが分かる。
客室清掃のときに、本当はいけないが、果物をちょっと持って帰るくらいのことはみんなやっているといわれ、むらさきのスカートの女も真似る。
→秘密を共有し、仲間として認められたことが示される
権藤チーフという人は、果物を持っていかない。「果物が嫌いだから」と説明される。
→権藤は黄色のこと。変わり者だが、同僚に極端に疎んじられているわけではなさそう。
黄色はさっそくむらさきのスカートの女の朝の通勤からむらさきのスカートの女の動きを見ている。それどころか、前日・出勤初日の帰り道も見ている。帰り道にはより道して、子供たちと鬼ごっこなどをして90分間走り回ったという。子供たちは、むらさきのスカートの女に触ろうとしても触れないので、触りに行くゲームをしたところ、あっさり触ることができた。
子供たちは驚き、失礼を詫びて、それをきっかけにむらさきのスカートの女は子供達と仲良くなり、鬼ごっこをして交流する。黄色はそれをじっと見ているだけ。
P365
むらさきのスカートの女は優秀で他人より早く新人研修を終えられそう。
P366
所長とむらさきのスカートの女が親しげに会話する。所長はむらさきのスカートの女に職場に馴染めているか、尋ねる。その中でチーフの名前を列挙されるが、黄色である権藤の名前は出ない。
黄色は休みの日なのに、職場に来てむらさきのスカートの女を観察するつもりだったが、制服を忘れてしまいかなわず。黄色は制服を取りにいったん帰宅して戻るつもりが昼寝してしまって夕方になってしまう。
→黄色のだらしなさが描かれる。
夕方に商店街でむらさきのスカートの女を見かける。ふらふら歩いて疲れきっている様子。姿を見せると誰もが注目する存在だったのに、今日は誰もむらさきのスカートの女だと気づかない。
P368
黄色は朝の通勤バスの中でむらさきのスカートの女と同乗する。しかし、むらさきのスカートの女に黄色のことを認識してもらえず。黄色はむらさきのスカートの女の服にご飯粒がついているのを見つけ、取ってあげようとして失敗して鼻を摘まんでしまう。むらさきのスカートの女が怒り出した様子だったが、それは痴漢されていたためで、むらさきのスカートの女は痴漢を告発する。黄色の存在はまるで無視される。
黄色が休みの日に、チーフたちと親しく飲みに行ったことが明かされる。
P372
所長がむらさきのスカートの女の痴漢事件について、同情ししきりに心配だと述べる。むらさきのスカートの女が仕事熱心で続けていくと宣言して嬉しかった、などと述べる。その会話を黄色は盗み聞きしている。
→どこで盗み聞きしているのか?
P374
翌日から黄色はむらさきのスカートの女と朝の通勤バスで会うことはなかった。
熱心に仕事をこなすむらさきのスカートの女の様子。
P376
帰り日、むらさきのスカートの女が子供たちに高価なチョコレートを持ってきている。
子供たちに仕事を明かし説明する。
P379
子供にあげたチョコレートの箱のマークがホテルのものであることが示される。子供たちが、そのマークが入ったタオルを小学校のバザーで手に入れた、という。むらさきのスカートの女には心当たりがない。
→黄色が職場からタオルを持ち出してバザーでさばいて小銭を稼いでいる。
P380
むらさきのスカートの女は、黄色があげたシャンプーの匂いをさせている。購入して使っているらしい。ホテルのシャンプーを使わないの?と同僚に尋ねられて、むらさきのスカートの女は「魚介類のにおいがする」などと言い放つ
→ここからむらさきのスカートの女の不遜な態度が目立ってくる。
P382
むらさきのスカートの女は、休憩の時、いつも誰かしらに声をかけられ、食べ物をすこしもらったりしている。同僚たちも、入職時よりもふっくらとして健康的になった、という。
P384
同僚たちの口さがない噂話。仕事は早いが雑、声のトーンが人によって媚びているなどと言われる。また、所長の車で毎朝通勤している、とも。
その噂話を聞いて、黄色は確認に行き、朝、むらさきのスカートの女が自宅前で所長の車に乗り込んでいることが分かる。
→むらさきのスカートの女は、徐々に所長と親しくなってきていることが分かる。
P386
黄色もむらさきのスカートの女も休みの日に、黄色は追跡する。変装している所長とむらさきのスカートの女がデートをしているのを目撃。喫茶店、映画、居酒屋、と移動。
P389
所長が変装用のサングラスをなくしたと慌てている。実は所長が居酒屋で置き忘れたのを黄色が勝手に持って行ってしまった。むらさきのスカートの女は、所長に姪っ子の誕生日プレゼントを何にするかなどと相談している。
むらさきのスカートの女は、所長と手をつないで商店街を歩いている。みんながむらさきのスカートの女だと気づいてはやし立てインタビューしたりカメラで撮影されたりする空想をする。そのとき、カメラに自分が映り込み「あ、黄色いカーディガンの女だ!」などと気づかれる…ということを思い浮かべている。
しかし、実際には誰にも気づかれずに商店街を通り過ぎる。
P392
朝のミーティングで。備品がどんどんなくなっているとマネージャーが苦言。
同僚たちが、不満げにしている。むらさきのスカートの女が所長とデキている、と噂され、シカトされ始める。黄色も、所長がむらさきのスカートの女宅に何度も泊まっていることを確認する。
むらさきのスカートの女は、休憩時間はひとりぼっちになり、公園でも子供たちに存在が気づかれなくなる。むらさきのスカートの女は、公衆電話からしきりに所長宅に電話をかけるが繋がらず、苛々している。
P395
むらさきのスカートの女の悪い噂はエスカレートしていく。小学校のバザーで、ホテルからなくなった備品が売りに出されているのがバレる。店番の子供たちが「女の人に頼まれた」という。
P396
同僚たちは、バザーに売りに出したのはむらさきのスカートの女と噂を流される。むらさきのスカートの女はそう当てこすられて、エレベータで同僚たちと言い争う。
P399
言い争う中に、黄色もいる。しかしまったく影が薄い。そこで「わたしたちは初めて目と目を合わせた」と。
P400
むらさきのスカートの女宅に所長が来ている。「盗品のことで」と告げ、喧嘩を始める。むらさきのスカートの女は逆上して、所長が客の下着を盗んだことを暴露しうろたえさせ、もみ合っているうちに階段から落ちてしまう。
所長が動かなくなったので動揺したむらさきのスカートの女のところに、黄色が駆け寄る。
P403
黄色は自信有りげに「所長は死んでいる」と断定する。さらに動揺するむらさきのスカートの女に、逃げるように勧める。
黄色は、むらさきのスカートの女に逃げ方について細すぎるほどの指示をする。
P406
先にむらさきのスカートの女を行かせて、手違いから黄色はむらさきのスカートの女を追いかけられなくなる。黄色はいったん自宅に戻るが、自宅アパートは家賃滞納で締め出され、南京錠がかけられている。窓を割って黄色は中に侵入する。それでもお金が足りないため、4200円の切符を買うために通りすがりの人からひとり100円ずつもらおうとして、あやしまれて途中で断念する。結局、指示したビジネスホテルにはむらさきのスカートの女は来ておらず、以来黄色は会えていない。
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所長の入院先にて。職場の人たちが見舞いに来ている。所長は脳震盪と骨折のみ。所長がむらさきのスカートの女のところに備品を盗んだことを謝りに行くよう促したら、こんな事件になったと所長は言い訳している。黄色は見舞いの場で所長に時給を上げて欲しいと直訴し、所長に非常識だ、仕事もできないのに、とたしなめられる。黄色は、所長が客の下着を盗んだことを仄めかして強請る。
P414
むらさきのスカートの女がいつも座っていた公園のベンチに黄色が座ってみると、子供がぽんと体を叩いていった。
→むらさきのスカートの女の位置に、黄色が成り代わったかのような余韻を残す。
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