「天空の絵描きたち」のあらすじ
月刊誌「文学界」2012年10月号
P98から156


P98
主人公・安里小春の紹介。
ヘルメット、つなぎ、命綱を着用している女性。何らかの現場に来ているのがわかる。15階建てのビルの外、などということから窓ふき作業の従事していることがわかる。高所でロープに宙づりにされ、落ちないようになっている仕組みが説明される。
→説明が長い割に、いまひとつどのような仕組みになっているかは理解できなかった。
P100
控室で小春の同僚たちが仮眠をとっている。小春が高所窓ふきの仕事を選んだ理由を回想している。
小春は前に印刷物のデザインの仕事をしていたが、徹夜残業した帰り道に高所窓ふき作業をした人が颯爽と地上に降りてきた場面に出くわして見入ってしまったことを思い出している。
仮眠をしている同僚たちの紹介。栗原は33歳のシングルマザーで離婚歴3回子供4人。田丸は20歳の男で地上で見張り役をすることしかできない。八屋は20代後半ですぐに飲みに誘ってくるので要注意人物。
→「小春の『油断できない人物リスト』のひとりに入れられていた。」は「小春は『油断できない人物リスト』のひとりに入れていた。」のほうが良い。
武田は、大学の夜学で環境デザインを学んでいる。肩まで金色の髪を伸ばしている。ちゃんぽらんに見えるが仕事に隙がない。権田は勤続20年の46歳で責任者。クマさんと呼ばれている。
小春は、権田を颯爽と降りてきて見入ってしまった時の男に重ね合わせてしまう。
仮眠が終わって、仕事に向かう。自信がなさそうな田丸と打ち合わせる権田。権田は使えないと首になりかけた田丸を拾って自分の班に入れたという。
武田が急に勃起した、などと言いだし、栗原をからかう。
P104
現場の最上階にて。
ゴンドラの描写。作業姿と道具の確認をしている場面。
屋上からの都心の眺め。
→「都心ではまずありえないほど、こんもりと葉を繁らせた木々の広がり」都心には大きい緑が計画的に配置されているのに?
P106
「…今ではその恐さをほとんど忘れている自分がいる」
→こういう「自分がいる」という表現は違和感がある。ここでは不要。
実際に窓ふきをする場面。窓ふきすることを「かっぱぐ」というらしい。
小春はゴンドラが下降しながら窓ふきをしていくときに下降のスピードについていけず、拭き残しをしてしまう。ゴンドラを戻してもらって拭きなおす。同僚たちが、胸が大きくて失敗した、胸で拭けばいい、などとからかう。
権田が小春をかばって、慣れるまで他人の動きをみて学ぶように、と代わりに拭いてくれる。権田の動きの軟らかさ無駄のなさに感嘆する小春。
P108
小春が羽田からもやい結びを習っている。ロープ作業では必須の技術。安全帯をしていても落下すると衝撃で大けがをする。羽田は「体で覚えるよりも理屈で覚えるべき」「この仕事は想像力が大事」と教訓を教える。しかし、エッチな冗談も言う。
P113
小春が作業している様子を下で通りすがりの女たちが見て、すごい、と感嘆している。
P114
愚痴と噂話。
もっと早く終わる現場なのに、会社が安請け合いして、予算が少ないから少人数で現場を回している、などと。経費を削りすぎて、資材も古くなってしまっている。
P116
拭き終えたまどをみて、羽田は「いい絵が描けた」などという。建物の中にいる人が、きれいなよい景色を見られるようになるからだと。
章が変わる。
小春が恋人・河野とデートをしに行く。移動中ももやい結びの練習をしている。
広告代理店業界に勤める河野は、仕事の取材も兼ねて自分で決めたレストランに小春を連れて行くが、あらかじめに伝えたりせず、食事中もなるほどね、というばかり。
→絵にかいたようなキザで嫌な男。ヤンキー上がりの栗原にせよ、ちょっと下品な肉体労働者など、凡庸な人物描写が多すぎる。
P119
河野は乾燥してひび割れている小春の手を見て「女の手じゃない」などと言った。不安定な仕事で、続けていくには無理がある、などとも。そういわれて小春もかっとなって一人でレストランから出てきた。そして権田と飲みたいと思って休日だが会社に寄って行こうと思い立つ。
P121
会社では、田丸が仕事を教えてもらえるということで休日返上で出てきていた。
→小春も喜んで、良い話というニュアンスになっているが、休日返上なんていま でははやらない。
権田が責任者を下されるトラブルになった噂話。
P123
権田のチームが担当しているビルで、ビルに入っている会社の社長が高価な時計をなくしたという。権田たちは警備員室に連れられていき、見た目について嫌味を言われたうえ疑われたという。問答の途中で時計が見つかったという報告があり、警備員が謝罪しなかったので、権田が起こって食って掛かった。それで権田は始末書を書かされた、そのチームにいた武田も「今まで何も言われなかったのに」などと不満を言う。
→私は権田や武田にあまり同情できない。ジュリアーニの割れ窓理論的にも、出入りするのにはそれなりの身なりをしていてほしい、という要望は無理なことではないと思うし、大きな盗難事故があったら、初動でとりあえず全員チェックさせてほしい旨の要望があっても妥当かな、と思う。
P125
わかれた河野から電話。酔っていて「人生について知っているつもりになっている」と小春をなじる。
P126
水谷のチームで仕事をすることになった小春。水谷は指示は分かりにくく、感情的になって強い言葉をぶつけるので嫌われている。そこに権田も加わることになった。
水谷が田丸に厳しい口調で指示しているのを権田はたしなめる。
小春は思い切って権田を飲みに誘ったら、田丸も一緒に飲みに行くことになった。
飲み会では肉体労働の賃金が安いことへの愚痴。会社が利益優先に走っていること、水谷の責任者としての能力への疑問などの愚痴。
P132
「おれらって、たかだか数十年生きて、死んでくんだよね。次々雪崩れるように生まれてきても、ほとんどだれもが、歴史に名前を残さないで消えてしまう。せいぜい孫の代まではおぼえてもらっているかもしれないけれど、二百年もすれば、その人が生きた証なんか、なかったも同然になるよ。二百年まえ、江戸時代に生きてたふつうの人のことなんて、おれらまったくわかんないでしょ?」
P135
権田が飲み会の帰り道で、小春の胸を触らせてほしい、と言いだし、小春も応じる。
→小春はほのかに権田に思いを寄せていたが、権田も小春が好きだったことがわかる。ちょっとベタ。
P136
権田から映画のお誘いのメールがある。
P138
権田が死んだ、と黒沢の携帯に連絡が入る。
P139
会社で、権田が死んだ事故についての説明会。羽田が墜落して権田が激しく損傷する場面を見ていた。
事故直前に、自分の補助ロープがほつれているのに気が付いた八屋が、権田の申し出でお互いのを交換した、と。
P142
会社の安全管理担当者が口を挟んで、権田の安全マインドの欠如が事故の原因というふうに話を持っていこうとして、羽田の反発を買う。説明会はうやむやのまま解散になる。
P146
家族の意向で会社関係者は火葬に立ち会えない。
P148
小春も会社の同僚も、権田の死に、はじめは激しく動揺していたが、徐々に平穏を取り戻していく。小春は後ろめたさを感じる。
P150
権田の死んだ現場は、会社が続けて受注していくことになったと聞いて、小春は憤る。
小春は、その現場に入りたいと願い出る。
P153
その現場に水谷が責任者としてくる。権田の失敗のせいで困っていると水谷が悪態をつき、武田や黒沢が憤慨する。黒沢が水谷を説諭。羽田が責任者を代行することになる。
P156
地上の田丸からは窓ふきをする5人が美しく並んでいるのが落滴のように見えた。


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