「同期は特別、というのは日本企業特有の風土なのだろうか?」


「奥付け見たら、2009年2月に第1刷で、2018年にやっと第3刷…これでいいのか…」

令和元年10月

「沖で待つ」絲山秋子(新潮文庫))




「同期の愛情・信頼・関係性」が描かれた作品。日本は特に同期というものを大事にしようとする風潮がある。(雇い入れた新人を辞めさせないために、ウェットな関係を作り上げてしまう、日本企業の戦略かもしれない、などと思うのは勘繰りすぎだろうか?)

本作では、同期で同じ初任地の及川と太っちゃんの交流と、友達・先輩後輩・恋人・家族・同期ではない同僚…との関係と対比的に描くことで、同期というものの関係を丁寧に描き出している。


P122
「同期って」「いつ会っても楽しい」、「楽しいのに不思議と恋愛には発展しない」
P124
初任地で、「不安を押し隠すことも出来ず黙って立ちつくしていたイメージ」「それが私たちの原点で、そんなことは今後も、ほかの誰にもわかってもらえなくてもよかったのです」

こういった感覚は、私は懐かしく思い出したものだが、会社勤めの経験がないと、想像しにくいかもしれない。


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本作の設定はバブル崩壊の少し前の新卒採用ということであるが、このころは男女雇用機会均等法が施行された時期だ。及川は数少ない女性総合職として、男性に後れを取ってはならないと肩肘を張っている感じがある、という指摘があった。それは及川の働きぶりもそうだし、女らしさをなるべく消そうというふうに文章が書かれている、参加者の感想があった。

この時の作者の意図ではなかったかもしれないが、今の時代になって読んでみて、働く女性のつらさや不利益が期せずして表されている。
この当時よく売れてテレビCMも頻繁に流れていた栄養ドリンク「リゲイン」のキャッチフレーズは「24時間たたかえますか?」であった。
及川も、ほかの男性総合職と同じくらいサービス残業しているようだ。
(今の時代の若者には、理解できない労働環境だろうなあ…)

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