「徐々に毒を増していくアンソロジー」
平成29年10月
「忍ぶ川」三浦哲郎(ページ数は新潮文庫第91刷版)
表題作「忍ぶ川」と「初夜」「帰郷」「團欒」「恥の譜」「幻燈畫集」「驢馬」からなるアンソロジー。「團欒」は、だんらん、です。
「忍ぶ川」「初夜」「帰郷」は設定や前提を引き継いだ連作とみなされるべきもので、「恥の譜」も設定は引き継いでいるが人物の性格などが若干味わいが変わっている。それ以外はそれぞれ独立した短編である。
司会からは、「どの短編が好きですか?」「志乃は好きですか?」という問いかけをしました。
後者は愚問だったようで…全員が好き、ということでした笑
ちょっと作ったようなわざとらしさを感じる人がいるかも知れない、などとも思ったのですが、「夫が働かないのに健気だ」「バカボンママみたいな感じなのかな」などと好意的でした。
ただ、周囲の人がお仕着せで結婚させようとしてきた人を結局袖にしたというエピソードをさらっと話すところなどは「本当は嫌なところもあるんだけど、作中ではうまく省かれているのかもしれない」という意見も出ました。
実際問題として、貧しさも極まれば厭でも人間の悪い面が出ざるを得ないことだろう。きれいごとだけでは済まないはずだ。ストーリーとしても手ぬるい、リアリティが欠如したものになってしまうことだろう。香水も、癖のある臭みがないとただの甘ったるいだけの匂いになってしまうという。何らかの厳しさ苦さがしっかり描かれているからこそ、情緒深い胸に迫るストーリーになるのだろう。
それにしても、主人公は(事実上)働かないでばかりで説教臭く、依存的である。そんな人間にどうして志乃が惚れ込んだのか?というのはちょっと疑問である。
参加者からは、それは血の問題ではないかという意見が出た。つまり、深刻な問題を抱えた家同士だからこそ相手に気兼ねせずに済むという。
「驢馬」も参加者に人気があった短編である。
まるでお互いに責任の押し付け合いをしているみたいだ、主人公・張君も自分の生活がうまくいかないのを犬の五郎を言い訳にしている、という。責任の押し付け合いの中でいじめが起こり、命が失われていくのだというふうに読んだという方がいました。
↓おまけ、今回のホワイトボード…
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