「時代の痕跡を残す小説」

平成29年8月
「羅生門・鼻」芥川龍之介(ページ数は新潮文庫第84刷版)



小さいころに通っていた道を、大人になってから久しぶりに通るとずいぶん印象が違っていることがある。小さいころは、なんの変哲もない農業用水の小川を飽きずに眺めていたものだ。メダカやザリガニやオタマジャクシがすっと泳いでいくのが楽しかったのだ。千円札が流れてきたこともあったっけ。すかさず掬い上げたけど。

今回改めてこのテキストを読んでみて、こんなふうに書いてあったのか、と驚かされた。綿密で情緒豊かな描写。状況の説明に徹して、抑制された冷静な文体。読み心地がとても良い。学校で教科書で読んだときはそんなことまで考えなかった。

芥川は、古い文献から取材して物語を創作することが多かった。夏目漱石の弟子だけど、森鴎外の手法に近い。そして、漱石のように自分の内面の苦しみや迷いをあらわすことはしないで、鴎外のように時代の空気を作品に閉じ込めた人なのだな、と感じた。

↓おまけ、今回のホワイトボード、登場人物一覧…


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