「シャボン玉消えた 飛ばずに消えた 生まれてすぐに 壊れて消えた」

平成29年4月
「乳と卵」川上未映子(ページ数は文春文庫第6刷版)



 司会からは次のような質問を考え、会で投げかけました。
Q1、ずばり、巻子としては、豊胸手術は男のためにする?自身のためにする?
Q2、p97の12行目「ほんまのこと」のほんま、とは何か?
Q3、本作を映像化するとしたら、巻子、緑子、夏子は誰が適任か?
Q4、緑子は何歳か?
Q5、この作品は何年ころを舞台にしているか?
Q6、緑子の緘黙の理由。
Q7、地の文まで関西弁やけど、こういう関西弁にどんな感想を持ちはりましたか?

この物語は、狂言回し的役割の夏子のところにシングルマザーの姉・巻子とその子供・緑子が夏休みの3日間押しかけてきた時のものである。この間に巻子は豊胸手術をするのだと浮かれてやってくる。
勢いのある関西弁に押されて、短いわりに読むのにエネルギーが必要だったかもしれません。総じて皆さん面白かったという感想です。

Q7は、主催者は関西人なので聞いてみたかったですが、きっと皆さん私を傷つけないために言葉を選んでくれるだろうと思ったので、あまり突っ込みませんでした…
きっと「うるさい」「うざい」「多弁」「バカっぽく聞こえる」などの感想を持ったことでしょう…
後半のクライマックスに向けて、徐々に関西弁の占める割合が増えていったのが面白かった。

Q1は、会では諸説出ました。
自分に自信を取り戻すため、出産・子育てで亡くしたものを取り戻すため、異物を除去するような気持ちで、話術が劣ると書かれていたのでホステスとして自信を取り戻すため、などの説。
ホステスとして自信を取り戻すのであれば、自分のためでもあり男のためでもあることになりそう。
私は、客の中に好きな人ができたのかな、などと想像をしましたが。

Q2は、緑子が緘黙を破って話した言葉と彼女の日記も併せて考えると、
「巻子としては緑子を産んで後悔しているのか?」という限局的な意味において巻子に問いたかったのが、
緑子が漠然と悩んでいた「成長に対する不満、不安を抱えて生きる意味」「生理もナプキンも乳房も、あらかじめ女として準備されることの意味」についても、 その問いの重さに耐えかねて巻子に併せて問い、持て余した気持ちをぶつけたのが「ほんまのことを言って」という言葉になったのであろう。
p23でも、緑子は「生きるのはしんどい。それなのにしんどく生きる人間を増やす営みを女は課されている」喝破している。
巻子が豊胸手術を受けたいというのは、緑子としては申し訳ない気持ちとじれったい気持ちが混ざったような感じであるのだろう。

私は、p92で巻子が元夫と会ってから帰ってきたのを、てっきりセックスして帰ってきたのかと誤解しておりました…それで元夫に相手してもらって、豊胸手術を断念したのだと思い込んでいたのですが、会の参加者の皆様からそれは違うだろう、とご指摘を受けました…
すると、巻子はどうして元夫に会ったのか、それも夏子たちに黙って?という疑問が浮かぶ。
元夫に、手術代金を無心するためではなかったか?
また、たった3日間で豊胸手術を済ませるのには無理がある、という指摘もあった。
何十万円から100万円以上の手術代金がかかるとのことだが、巻子にはそれを工面するほど経済的余裕はなさそうだ。
これらを考えると、どうやら巻子は真剣に豊胸手術を実現させる気はなかったのではないかと思われる。
巻子と緑子の関係がぎすぎすして、緑子がしゃべらなくなってしまったので、その煮詰まった状況を打開したい、という願望もあって夏子の家に遊びに来たのかもしれない。
豊胸手術は言い訳であって、ショーウィンドーでとても手が届かない高価な品物を自分が手に入れる様を夢想するようなものに過ぎなかったのかもしれない。

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p98で緑子が賞味期限切れの生卵を頭にぶつけてドロドロになる場面。この小説のクライマックスについて。
ある参加者は印象的で衝撃的であったと言うが、ある参加者はちょっとあざとい、半年の緘黙というのがこの程度のことで破られるのには軽すぎると思う、と感想を述べていました。

スーパーで売られている鶏卵は、巨大な1個のみの細胞から出来ている。例外的に大きい細胞である。
もし受精していれば、細胞分裂が始まり、無数の細胞が役割を担って1個体として生命を持つようになる。
人間が食べるために、敢えて卵に受精させずに巨大細胞の状態でとどめているのは、見ようによってはグロテスクかもしれない。

かたや否が応でも受精して細胞分裂という成長が始まった緑子、かたや人間の都合で無精卵に留め置かれている鶏卵。印象的な対比ではある。
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Q5は2004年以降。途中で作中に5000円札が女の人、という記載がある。
Q4は10から12歳くらい。初潮は来ているけどまだ子供。

会では「この日記は読まれる前提で書いているだろうな」などと指摘あり。
また、女性は胸が大きいことは絶対的に男性の支持を受けることだと思い込んでいる人が多いが、実は小さいほうが良い人もけっこう多い、男女の間で認識のギャップがあるのでは?
それは、ペニスについて言えば、まったく逆のことが当てはまるのでは?などの議論が出ました。

↓おまけ、登場人物の関係図…


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