「♪酒はうまいし ねえちゃんはきれいだ…」
平成27年8月
町田康「きれぎれ」
町田康「きれぎれ」(ページ数は、文春文庫第1刷版)
文章の密度が濃くて読むのが大変だった、作品世界になかなか入り込めなかった、などの感想が多かった。
吉祥天女のご加護を受けられず、というよりも、自ら「あげまん」新田富子との縁談をぶちこわして、地獄の門番みたいに牛頭馬頭のいるランパブの女に引っかかり、金に窮して吉原にへこへこ借金しに行くもかなわず、友達の家を巡りに行くと誰かの死体何だかよく分からないものを食べさせられる、というブラックなスピード感あるストーリー。
読む側の趣味や感性によって、面白いと思えるか嫌悪感を抱かれるか、両極端に分かれそうな話かもしれない。
主人公はいちおう絵描きという設定だが、絵についての論評はほとんどない。「吉原の絵が最近なんとなく良くなった。」などと書かれるほどだ。
しかし、音楽の比喩については的確で、ヨナ抜き音楽が「陰気なんだか陽気なんだかわからない」(p17)というのは、なるほど、陰気か陽気か分からないな、と感心しました。やっぱり、歌手をやっているだけのことはある!ちなみにヨナ抜きというのは、「北国の春」「恋するフォーチュンクッキー」などがそれに当たるらしいです。
「バスクリンのような黄緑色」とかも、うまい比喩だという意見もありました。
ほかに、「鎌草少将」は深草少将というもののパロディだったり、カミュの異邦人のセリフが出てきたり、なかなかの読書家ぶりも発揮されています。
その昔、「帰ってきたヨッパライ」という曲がありました。ちゃらんぽらんな酔っぱらいが酔って死んで天国にいったけど、天国でもちゃらんぽらんでみんなが手を焼いたので「お前は現世に帰れ!」と神様に言われて生き返って現世に戻った、という曲です。天国と地獄が違うけど、ちょっと似ているな、と思ったり。
この作品の2年前に直木賞を取った「赤目四十八滝心中未遂」という車谷長吉さんの作品も、地獄めぐりのイメージだけど、こちらは大変にシリアスで、とても対照的です。よかったら読んでみてください。
今回も充実した議論ができました。
参加者の皆様に感謝申し上げます。
予告編のページ
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