「娘にとって母とは何か?母にとって娘とは何か?母は娘に何を与えたか?」(by 楳図かずお)

小川洋子「妊娠カレンダー」(文春文庫)


第104回(平成3年下期)芥川賞受賞作品。
妊娠カレンダー
姉の妊娠から出産に至るまでの過程を、妹の目を通して、日記形式で表現されていく。
文章を読み進めていくうちに、この妹は、姉の妊娠・出産は必ずしも「おめでたい」と思っていないようであることがわかる。
「おめでたい」と思っていない理由は、姉は学生時代から神経症的で些細なことで大騒ぎして周囲の者を振り回し続けてきたため、
妊娠で過敏な状態になったことにまたまたウンザリしているから、ということがまず第一にあるようだ。

そして、この姉妹の両親が亡くなり、姉は結婚して自分の言うことや願いをよく聞き入れてくれる男と結婚し、
姉と夫のままごとのような生活に巻き込まれるのもこのウンザリに拍車をかけている。
しかし、若いころから何かと迷惑に思うことも多かったであろう姉のことを、
この妹は必ずしも嫌っている訳ではないようだ。それは、姉のわがままに対して、
可能な限りそれを叶えてあげようとする態度や、姉の結婚相手について、
姉のためにならないという観点で嫌っている様子などから感じられる。
また、小さいころは不思議な幻想的なM産婦人科医院で一緒に仲良く遊んだことを思い出している。

つまり、妹は姉に対して、好悪混ざった感情を抱いているのだ。
そしてそれは、似ているからこそ嫌ってしまうという、同属嫌悪の感情ではなかろうか。
その入り混じった感情は、姉が子供を産むらしい、ということが分かってから増幅されてしまった、というふうに私には感じられた。
妹は、生まれる前の胎児の段階から、姉の子供に対して、自分が提供する食事の中に毒が入っていて、
それが胎児を害する、という夢想をすることで悪意をぶつけ続けている。

しかし、毒入りの食事・悪意にもかかわらず、きっと姉は元気な赤ん坊を産み、
その赤ん坊もまた、姉と同じく周囲の家族を振り回すことだろう。
しかし、妹はやはり従順に振り回されるに違いない。

M病院の描写について、虫の体を連想させる器具、不思議なガラス容器、など、何か宗教の祭壇を思わせる。
勤めているのも、高齢のよく似た2人の看護師であったり、何か宗教的儀式を経て、子供が生まれてくるかのような印象であった。

F田さんは小川洋子の専門家だそうで、食べ物がよく出てくる、
西洋のオシャレなものがよく出てくる、登場人物にほとんど名前が出ない、などの特徴を指摘してもらった。

今回も、雑談を含めて大いに議論が盛り上がりました。
次回も、皆様のご参加をお待ちしております!!


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